理学療法士になるために|国家試験の内容や受験資格について解説
- 更新日
理学療法士は、日常動作の機能回復をサポートする国家資格保持者です。国家試験に合格する必要があり、試験にも受験資格が必要となります。
今回の記事では、理学療法士の国家試験の内容や取得までの流れについて紹介していくので、受験を検討している方は参考にしてみてください。

目次
2.理学療法士になる順序を解説
3.第58回理学療法士国家試験の合格者数・合格率は?
4.理学療法士になる難易度
5.合格後の免許申請手続き
6.試験の合格発表前に就職先も検討しておこう
7.チャンスは年に一回 しっかり準備して資格を取得しよう
1.理学療法士は国家試験に受かる必要がある
理学療法士は以下のように定められています。
出典:厚生労働省「理学療法士及び作業療法士法 第二条3」
理学療法士は国家資格のため、国家試験に受からなければなれません。資格取得後は、主に病院・クリニック、介護施設などでリハビリや機能訓練等を行います。
理学療法士は「理学療法」を行う動作の専門家
理学療法とは、理学療法士の指導のもとに行う治療法です。運動機能の低下、または低下するおそれがある方を対象に、日常的な基本動作を維持・改善することを目的としています。
座る・立つ・歩くなどの日常生活動作を、体操・運動などの機能訓練、温熱・電気などを使った物理的手段を用いて治療するのが一般的です。
理学療法士の具体的な業務内容
足の手術などで歩行訓練が必要な場合や、重篤な症状で寝たきりの期間が長くなった方の復帰時など、生活する上で避けられない動作を一からできるようにサポートするのが運動療法です。
リハビリテーションで発生する痛みやむくみなどを軽減することを目的に、対象者が運動療法を行えない場合や、次のステップへ進むために行います。

理学療法士とは?仕事内容や給料、作業療法士等との違いを解説
理学療法士(PT)は、理学療法を用いてリハビリテーションを行う専門職。作業療法士との違いや仕事内容、給料、魅力などを解説。
詳細を見る2.理学療法士になる順序を解説
前述した通り、資格取得には国家試験に合格する必要があります。ただし、受験するにもいくつか要件があります。受験資格を得るには、養成校で学習する期間が必要です。
ここでは、養成校と国家試験について詳しく解説していきます。
まずは養成校で必要な課程を修了する
理学療法士の養成校は3パターンあり、4年制大学・短期大学(3年制)・専門学校(3年制・4年制)のいずれかに通い、課程を修了する必要があります。
※視覚障害者を対象とした特別支援学校を修了するパターンもあります。
「一般教養科目」「専門基礎科目」「専門科目」「臨床実習」の4種類の科目があり、3年制でも4年制でも取得できる資格は同じです。
早く現場に出たい人や、短期間で取得し現場でいち早く実践を積みたいという人は3年制を選ぶといいでしょう。逆に、しっかり知識と技術を学びたい人は4年制を選択する人が多いです。
ただしその違いによって区分されることはないためあくまで目安程度にとどめておき、目標や今後のプランなどを考えた上で、自分に合った学校を選択するといいでしょう。
年に1回の国家試験に合格する
養成校での課程を修了すると、国家試験の受験資格を得られます。実施日は2月中旬で、願書受付期間は12中旬~1月上旬です。受験後、合格発表は3月下旬になります。
試験科目は以下の通りです。
筆記試験のみを行います。例外として重度視覚障害者の場合、筆記試験に代わって口述試験・実技試験が行われます。
科目としては下記の2種類になります。
- 一般問題
- 実地問題
一般問題(配点:1問1点、全160問)
解剖学・生理学・運動学・病理学概論・臨床心理学・リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む。)・臨床医学大要(人間発達学を含む。)および理学療法。
5択選択方式。基礎的な知識が十分に理解できているかが求められます。
実地問題(1問3点、全40問)
運動学・臨床心理学・リハビリテーション医学・臨床医学大要(人間発達学を含む。)および理学療法。
実際のケースを想定した回答を求められます。過去の症例や臨床を想像して答えを探るより実践的な内容が多いです。
第52回 |
第53回 |
第54回 |
第55回 |
第56回 |
第57回 |
|
出願者数 |
14,379人 |
12,691人 |
13,253人 |
12,831人 |
12,503人 |
13,377人 |
受験者数 |
13,719人 |
12,148人 |
12,605人 |
12,283人 |
11,946人 |
12,685人 |
合格者数 |
12,388人 |
9,885人 |
10,809人 |
10,608人 |
9,434人 |
10,096人 |
合格者数 |
90.3% |
81.4% |
85.8% |
86.4% |
79.0% |
79.6% |
出典:厚生労働省「資格・試験情報」
合格基準は一般問題と実地問題それぞれの得点で約6割以上が目安になります。また上記の過去5年間受験データの通り、平均合格率は約83%程度であることがわかります。
時事問題にも気を配ろう
毎年のことではありますが、社会情勢に応じた時事問題が入ることが多いです。
受験科目の教科だけではなく、医療業界で話題になっている事例や注目されている課題など、時事的な問題への対策もしておきましょう。
厚生労働省の過去問を活用しよう
厚生労働省から過去の試験内容と回答が公開されています。養成校で学んだ知識が、どのような形で出題されるのか傾向をつかむことができるので、活用するといいでしょう。
また、問題数がどれくらいになるのか理解できるため、受験する際の回答ペースなどを把握するのにも役立ちます。
スマホアプリも活用して対策しよう
現在はスマホアプリでの学習も可能です。iPhoneであれば「App store」、Androidのスマートフォンであれば「Google Play」から、試験にフォーカスしたアプリを無料でダウンロード可能です。「理学療法士 試験」と入力すれば、候補がいくつも出てきます。
PC上でも、有志で問題を作成しているサイトがいくつもあり、ゲーム感覚で進めることも可能なので気軽に勉強を進めることが可能です。
3.第58回理学療法士国家試験の合格者数・合格率は?
2023年3月23日(木)に結果が発表された第58回(2022年度)理学療法士国家試験の合格者数・合格率を見ていきます。
第58回理学療法士国家試験
試験実施日 |
2023年2月19日(日) |
合格発表日 |
2023年3月23日(木) |
受験者数 |
12,948人 |
合格者数 |
11,312人 |
合格率 |
87.4% |
参照:厚生労働省「第58回理学療法士国家試験及び第58回作業療法士国家試験の合格発表について」
第58回理学療法士国家試験は、受験者数12,948人、合格者は11,312人、合格率は87.4%という結果でした。
4.理学療法士になる難易度
国家試験の合格率が87.4%と聞くと「理学療法士になるのは意外と簡単?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。では、理学療法士になるのは実際にどれくらい難しいのでしょうか。他の職業と比べながら解説してみます。
合格率の高さ=難易度の低さではない
例えば難関職種の筆頭である医師の国家試験(2023年)の合格率は91.6%。さらに看護師においても、国家試験(2023年)の合格率は90.8%と高い数値を示しています。
しかしもちろん、医師や看護師になるのが簡単というわけではありません。試験自体はしっかり対策をすれば合格できますが、学校を修了し、受験資格を得るまでに高いハードルを越えなければならないからです。
理学療法士になるにあたっても、養成校の入学試験に合格し、養成校の卒業要件を満たした上で試験に臨まなければなりません。
養成校に入学する難易度
養成校は偏差値としては45〜75と幅広く分布しており、最高峰は医学部と同等レベルの難しさと言えます。
養成校を修了(卒業)する難易度
先述の通り、養成校で学ぶ科目は4科目。中学や高校で学んだような一般教養科目に加え、理学療法士になるために必要な膨大な知識を座学と実習の両方を通じて学ぶことになります。
今まで触れてこなかった専門的な分野での学習に何年も身を投じることになるため、「理学療法士になる」という気持ちを保ってひたむきに知識を吸収し続ける必要があります。
また、卒業は「理学療法士の卵として自信をもって送り出せる」と学校に認められた証でもあります。そのため生半可な知識や技能では卒業することはできません。
国家試験に合格する難易度
養成校でしっかり技術と知識を学んだ人にとっては、万全な対策をすれば試験には十分に太刀打ちできます。
しかし、養成校でしっかり学び、試験に受かるまで対策を続けるのは実は簡単なことではありません。事実、2023年は現役生の合格率が約95%であるのに対し、既卒生の合格率は49%まで落ち込みました。一度試験に落ちた場合は働きながら再チャレンジとなることが多く、卒業時の水準を保ったまま学び続けることが難しくなってしまうのです。
その点で、合格率とは裏腹に気の抜けない試験であると言えるでしょう。
5.合格後の免許申請手続き
国家試験合格後は免許申請をおこない、厚生労働省が管理している理学療法士名簿に登録されることで、初めて理学療法士として働くことが可能になります。
免許申請に必要な手続きの流れ
申請手続きのおおよその流れは次のとおりです。
※一部の保健所は受付窓口となっていない場合があります。各都道府県のサイトで確認が必要です。
必要書類一覧
必要書類一覧は以下の通りです。
理学療法士の免許登録後は免許証が届くまで2~3ヶ月かかります。免許証がとどく前に、就職先で免許の有無を求められることがありますが、この場合は「登録済証明書」を提出すれば問題ありません。
就職先で求められることがありますので、忘れずにこの「登録済証明書」が必要かどうか確認しておきましょう。免許登録申請後に登録済証明書の発行を希望した場合、対応してもらえないことがありますので注意が必要です。
「登録済証明書」を希望する場合は「登録済証明書用はがき」が必要となります。申請時に忘れずに持っていくようにしましょう。
6.試験の合格発表前に就職先も検討しておこう
実習先へそのまま入職するケースもありますが、必ず書類の提出などは求められます。また、合格発表前に資格取得予定として働ける施設も多数存在するので、併せて検討しておくと良いでしょう。
書類の準備を進めておこう
履歴書は必ず必要なので、準備は必須です。施設ごとに書く内容が異なる自由記述欄以外は同じ内容になるため、その部分だけでもフォーマットとしてまとめておくことで、時間を削減できます。
自由記述欄に関しては希望先によって異なるため、就職先の検討が決まり次第、事前の下調べなどを怠らないようにしましょう。
7.チャンスは年に一回
しっかり準備して資格を取得しよう
国家試験は年に一回しかありませんが、毎年8割程度の受験者が合格しています。プレッシャーはありますが、極端に難しいわけではありません。
過去問も厚生労働省から公開されており、現在は情報も集めやすくなっています。地道に努力することで適切な準備は可能です。今回の記事の内容を参考に、理学療法士になるための準備を進めてみてください。

福田 将也
セカンドラボ株式会社
URL:https://note.com/2ndlabo/n/nfb7ce82e34c0
2018年11月よりセカンドラボ株式会社に入社。主に介護施設を中心に医療介護向け求人メディア「コメディカルドットコム」の営業・採用課題のサポートを行う。また、コンテンツマーケティング業務にも従事。