障害児入所施設とは?種類や1日の流れ、職員配置まで解説
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障害を持つ子どもたちが生活を送る場として、「障害児入所施設」という施設があります。この障害児入所施設では、障害を持つ子どもたちに、日常生活を送るうえで必要な知識や技能を教えています。
では、この障害児入所施設にはどのような特徴があるのか、どのような方が働いているのか、そしてどのような種類があるのかといった点を解説していきます。
障害福祉に興味がある方にとっては、職場の候補の一つがこの障害児入所施設です。どのような施設かをしっかりと理解し、転職や就職に役立ててください。
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目次
1.そもそも障害児入所施設とは?
障害児入所施設は2012年に改正された児童福祉法により登場した施設です。法改正までは、子どもたちの持つ障害に合わせてさまざまな施設が存在していました。聴力障害の子どもたちの施設、知的障害を持つ子どもたちの施設などです。
こうした施設を一元化し、どのような障害を持つ子も一元的に預かる施設が障害児入所施設です。
障害を持っている支援が必要な子どもが入る施設
障害児入所施設とは、身体障害や知的障害や発達障害など、種類を問わず障害を持ち、家庭での生活が困難な子どもを預かっています。施設では日常生活を送るうえで必要な知識や技能を教え、将来的な自立を目指しています。
入所に関しては障害者手帳こそ不要なものの、行政や施設責任者、医師などが総合的に判断し、入所が必要であると認められた場合に入所します。希望した方がすべて入所できるわけではありません。
反対に言えば、障害児入所施設に入所しないと日常生活を送ることが困難な子どもたちが集まっているということであり、この施設で働くということは、こうした子どもたちのケアを行うということになります。
対象となる子どもたち
対象となる子どもは障害を持ち、かつ家庭で日常生活を送ることが困難な子どもです。障害の種類は問わず、知的障害、身体障害、発達障害のすべての障害が対象です。
入所のきっかけのひとつが児童相談所からの措置入所と言われており、実際に家庭内で虐待を受けた経験を持つ子どもが多いのが特徴です。
障害児入所施設の種類「福祉型」と「医療型」の違い
障害児入所施設は大きく分けて2つに分類されます。その2つの特徴や違いについて解説していきましょう。
福祉型障害児入所施設の特徴は、子どもたちの介護が重視されているという点です。子どもたちは障害こそ持っているものの、身体的な病気を持っておらず、健康な子どもたちを中心に預かっています。
そのため、福祉型で提供されるのは、入浴介助や食事介助などの介護が中心です。もちろん介護をしながら日常生活を送るための知識や技能を身につけるための教育も行われます。
医療型障害児入所施設は、文字通り医療を同時に提供しています。医療型の障害児入所施設は、医療法上は「病院」に区分されるため、医師や看護師が常駐し、入所している子どもたちの健康管理や治療なども同時に提供しています。
もちろん必要な介護に関してもきちんと提供され、病気を持っている子どもや、障害の程度が重い子どもなどが主な入所対象者となります。
スカウトサービス登録はこちら2.障害児入所施設の現状を知ろう
2012年の法改正から開設された障害児入所施設ですが、2025年現在どのような状況になっているのかという点を紹介していきましょう。
全国にある障害児入所施設の数と利用者数
まずは障害児入所施設の数に関するデータを紹介します。少々古いデータになりますが、厚生労働省の調べによる2019年時点の全国の施設数と入所者数を紹介しましょう。
施設 |
施設数 |
入所者数 |
---|---|---|
福祉型障害児入所施設 |
260ヶ所 |
6,944人 |
医療型障害児入所施設 |
268ヶ所 |
21,424人 |
合計 |
528ヶ所 |
28,368人 |
全国に520ヶ所以上、3万人近い入所者がいます。全施設の定員の合計は32,874人であり、施設全体を通した入所率は86.3%です。ただちに施設数が足りていないという数字ではありませんが、これはあくまでも全国平均です。地域によっては不足している地域があると考えられます。また、入所すべき障害児がいるにも関わらず、人員の関係で入所できない子どもがいる可能性もあり、十分な定員が確保できているとは言い難い状況といえます。
入所した理由
同じ資料から、入所した理由や措置入所と契約入所の割合に関しても紹介していきましょう。措置入所とは、児童相談所などが入所すべきであると判断し、措置として入所させるものです。契約入所とは、家庭の事情などで日常生活を送るのが難しい家族が、障害児入所施設に相談して入所する形です。
施設 |
措置入所 |
契約入所 |
---|---|---|
福祉型障害児入所施設 |
66.2% |
33.8% |
医療型障害児入所施設 |
29.1% |
70.9% |
福祉型は措置入所が約2/3であり、医療型は約7割が契約入所とはっきりと傾向が分かれています。医療型は病院であるということもあり、治療のため入院というイメージで利用されていることが多いと考えられます。
では、続いて入所の理由に関して紹介していきましょう。
施設 |
入所経緯 |
入所理由 |
||
1位 |
2位 |
3位 |
||
福祉型 |
措置入所 |
虐待(疑い含む) |
保護者の養育力不足 |
保護者の疾病 |
契約入所 |
保護者の養育力不足 |
育児疲れ |
保護者の疾病 |
|
医療型 |
措置入所 |
虐待(疑い含む) |
保護者の養育力不足 |
家庭の経済的理由 |
契約入所 |
保護者の養育力不足 |
リハビリ(療養入所) |
保護者の疾病 |
いずれの施設でも、措置入所でもっとも多い理由は虐待となっています。福祉型では35%、医療型では約半数の49%がこの虐待(疑い含む)が入所理由です。そのほかにも保護者の養育力不足や育児疲れなど、保護者の都合で入所せざるを得ない子どもが中心と考えられます。
スカウトサービス登録はこちら3.「福祉型障害児入所施設」の支援について
福祉型障害児入所施設では、最終的には障害を持つ子どもたちの自立を支援する、また保護者や家族が養育できるようにサポートするという目的を持っています。単に、日常生活を送るのが難しい子どもたちの生活の場というだけではなく、日常生活を送るために必要になる知識や技能を提供するというのが基本的な考え方です。
この最終目的に向けて行われている具体的な支援の内容は以下の通りとなります。
- 支援計画の作成・実施
- 安全・安心な生活環境の整備
- 日常生活動作(ADL)の支援
- コミュニケーション方法の指導
- 支援上の課題が生じた子どもへの対応
- 家族への支援
それぞれの項目に関して詳しく解説していきましょう。
【その1】支援計画の作成・実施
障害を持っている子どもといっても、障害の種類や程度には個人差があります。また、子どもたちそれぞれには将来の希望もありますので、まずは子どもたちの希望を聞き、その希望に沿う形で長期的な支援計画を作成します。
もちろん、支援計画はその進行具合や、将来に対する子どもたちの考え方が変わればその都度見直されることになりますが、まずは計画を立てて、目標達成のために養育を続けていくのが重要です。
【その2】安心安全な生活環境の整備
入所理由の中で虐待が多いように、障害児入所施設に入所する子どもの中には、他者に対する愛着というのを持てないケースが少なくありません。他者、特に大人に対し愛着が持てず、警戒心を持ち続けるようでは、施設内での養育もスムーズに進みません。
そのため乳幼児や被虐待児等に対しては、特に1人の担当者がつき、きちんと向き合うことで子どもたちが安心して生活できる環境づくりを行います。
【その3】日常生活動作(ADL)の支援
日常生活を送るという当たり前の行動に関して、しっかり支援をすることは、障害児入所施設の業務の中心といえます。食事、排泄、入浴といったものから、金銭管理、服薬に関する管理など、将来的に必要となる日常生活動作の支援が中心です。
【その4】コミュニケーション方法の指導
障害を持つ子どもの中には、他者とのコミュニケーションに問題を抱える子どもがいます。こうした子どもたちにコミュニケーションの楽しさを伝えるのも重要な支援の一つです。子どもたちがコミュニケーションを楽しいと感じられるように、肯定的な支援が行われます。
【その5】支援上の課題が生じた子どもへの対応
支援を行う上で生じる課題としては、虐待によるPTSDや、自傷行為などが挙げられます。こうした課題を持つ子どもたちに対し、心理的なケアや環境を整えることで対応します。
【その6】家族への支援
最終的には家庭に戻り日常生活を送ることを目的とし、家族、両親に対しても養育できるようなケアも重要です。関係機関や専門家と連携しながら、家庭や家族に対する支援も行います。
スカウトサービス登録はこちら4.「医療型障害児入所施設」の支援について
医療型障害児入所施設は障害を持つ子どもたちの入所する施設であるのと同時に、病院でもあります。そのため行われる支援も、病院としての医学的な支援が中心です。
- 手術や医療的ケアの評価
- 病気の治療・看護
- リハビリテーション
- 病気・障害の状態に配慮した活動や機会の提供
【その1】医療行為に関するケア
医療機関として適切な医療行為の提供を行うのが何より重要な支援です。医療行為に関するケアには、内科的治療はもちろん、手術などの外科的治療も含まれており、入所した障害を持つ子どもに対し、適切な医療行為が提供されます。
【その2】病気に対する治療
障害とともにその子どもが持っている病気に対する治療も行われます。この点では、障害児入所施設というより、病院というイメージが強い支援といえるでしょう。
【その3】リハビリ
障害を持つ子どもたちが、自立して日常生活を送れるように、必要であればリハビリも提供されます。理学療法士や作業療法士といった専門家の指導の下、適切なリハビリを提供しなければいけません。
【その4】病状を考慮した活動機会の提供
障害児入所施設は、病院であるのと同時に障害児が生活を送る場でもあります。また、日常生活を送るために必要な知識や技能を提供する施設でもありますので、子どもたちの病状に合わせながら、さまざまな体験活動を提供します。
スカウトサービス登録はこちら5.障害児入所施設の1日の流れ
障害児入所施設に入所している子どもたちが、どのような生活を送っているのか、1日の大まかな流れを紹介しましょう。
時間帯:朝(6時〜12時)
多くの施設において、起床時間は6:00~6:30頃です。その後朝食を摂り、それぞれ学校に登校します。学校は特別支援学校、もしくは近隣の学校の特別支援学級が中心ですが、施設によっては学校施設を併設しているケースもあります。
日勤の職員は、子どもたちが学校に登校した後、8:30~9:00頃出勤するケースが多いでしょう。
時間帯:昼(12時〜18時)
午後になると子どもたちが下校してきます。下校から18:00頃までは基本的には自由時間となり、宿題をしたり遊んだりと自由に過ごします。
働く方に注目すると、13:00頃に遅番職員が出勤し、宿直担当の職員も夕方までに出勤となるのが一般的です。
時間帯:夜(18時〜22時)
多くの施設では18:00頃に夕食となり、その後随時入浴となります。消灯時間は21:00~22:00頃になっており、入所している子どもたちは、規則正しい生活を送るのが一般的です。
夕食のタイミングまでに早番職員は退勤し、夕食、入浴の介助は遅番職員、宿直職員の担当となります。その後就寝のタイミングで遅番職員は退勤となり、宿直職員は早番職員に引き継ぐタイミングまで仕事に従事します。
スカウトサービス登録はこちら6.障害児入所施設で働く人の職種
では、実際に障害児入所施設では、どのような職種の方が働いているのか、仕事内容とともに紹介していきましょう。
1:保育士、児童指導員
実際に障害を持つ子どもたちと直接的に接するケースが多いのが保育士、児童指導員です。保育士は国家資格であるため、ご存じの方も多いでしょう。児童指導員となるためには要件があります。
- 都道府県の指定する児童福祉施設養成機関を卒業していること
- 大学や短大で特定の学部を卒業していること
- 幼稚園~高校のいずれかの教員免許を所有していること
- 社会福祉士もしくは精神保健福祉士の資格を持っていること
上記の要件のうち、いずれか1つを満たしている方が児童指導員としての業務にあたることができます。反対に考えると、上記の条件のいずれかを満たしていれば、未経験者でも働ける職種であるともいえます。
2:医師や看護師など
医師や看護職員に関しては、医療型施設には当然配置が必須です。福祉型施設においても、特定の条件を満たす場合は配置が義務付けられているため、福祉型施設の求人も少なくありません。
仕事内容はもちろん入所している子どもたちの健康管理や治療となります。
3:児童発達管理責任者
子どもたちへの支援計画を作成し、その支援計画が計画通り進んでいるかを管理する役職です。児童発達管理責任者となるためには、実務経験や研修の受講が必須であり、未経験でいきなり就職できるポジションではありません。保育士や児童指導員として働きながら実務経験を積み、将来的に資格取得を目指しましょう。
4:心理指導担当職員
虐待を受け、心に傷を持っている子どもはもちろん、その両親に対しても心理的なケアを行うのが心理指導担当職員です。心理指導担当職員には特定の資格要件はありませんが、大学で心理学を学ぶなど、一定の要件を満たさないと担当できない職種となります。
5:職業指導員
障害を持つ子どもたちが、将来的に自立して生活を送っていくためには、仕事をして収入を得なければいけません。こうした職業訓練の支援を行う施設には、職業指導員の配置が義務付けられています。
6:作業療法士
医療型施設でリハビリを提供する場合に配置が必須となるのが作業療法士です。作業療法士や主に生活に必要不可欠な動きに関するリハビリを担当します。
7:理学療法士
理学療法士もリハビリに必須な職種であり、主に運動機能の回復を目的としてリハビリを指導します。この職種も医療型施設で求められる職種です。
8:言語聴覚士
言語聴覚士も作業療法士、理学療法士同様に、リハビリに関する職種です。話すことや聞くこと、さらに食べることなど、口や耳に対するリハビリ全般を請け負います。
9:栄養士
栄養士は福祉型施設では配置が必須の職種です。仕事内容はもちろん入所している子どもたちへのメニューの考案や調理員への指導ということになります。医療型施設では設置義務はありません。
10:調理員
調理員は栄養士が作成したメニューを調理する担当職種となります。栄養士とは違い、特定の資格が不要であることから、未経験者の方でも働ける職種です。
11:施設長
ここまで紹介した全職員をまとめ、その施設の運営を行う代表者が施設長であり、当然各施設に1人ずつ配置されます。
スカウトサービス登録はこちら7.障害児入所施設が連携している機関
障害児入所施設は、単独で運営されているものの、各種関係機関と連携し業務にあたるのが一般的です。施設だけでは対応できない部分は、積極的に連携機関と協力し、問題を解決していきます。
1:警察
障害児入所施設の入所している子どもは、虐待やその疑いがあるケースが多く、警察との連携は重要なポイントです。児童虐待が判明した場合に、子どもを保護する機関の一つが警察であり、警察を経由して入所してくる子どもも少なくありません。
障害児入所施設の職員は、警察から虐待の事実や状況などをしっかり聞き、入所後のケアの参考にするのが一般的です。
2:病院
特に福祉型施設の場合、入所している子どもが怪我をしたり病気にかかった場合、速やかに病院で診察を受けさせる必要があります。怪我や病気にその子どもが持つ障害が影響している可能性もあるため、普段から病院とは密に連絡を取り、子ども一人ひとりに適切なケアを行えるように準備する必要があります。
3:地方自治体の福祉・保育窓口
各自治体の福祉課や保育課の窓口では、児童手当の申請や保険証の発行、また障害者手帳の発行などを行います。障害を持つ子どもを預かる障害児入所施設では、自治体の福祉課などと連携し、速やかに手当の受給や必要な書類の発行ができるように準備しておく必要があります。
4:教育機関
障害を持ち、入所している子どもたちも、当然ですが教育を受ける権利があります。そのため地元の教育機関、特に特別支援学校などとの連携は重要です。もちろん、障害の程度によって通学が難しいケースはありますが、子どもたちが将来自立するためには、教育機関に通学し、社会性を身に着けるというのも重要な支援の一つです。
子どもたちがどのような障害を持ち、どのような課題を抱えているかなど、施設職員と教育機関が情報を共有し、協力しながら子どもたちが安心して教育を受けられるようにサポートしていく必要があります。
5:グループホーム
グループホームと聞くと、認知症を抱える高齢者向けの施設を想像する方もいらっしゃるかもしれません。ここでいうグループホームとは、障害者向けグループホームです。
障害児入所施設は、あくまでも障害を持つ子どもが入所する施設です。原則として入所できるのは18歳未満の未成年であり、18歳を超えた成人は、障害者グループホームに移るのが一般的です。もちろん入所者の持つ障害や各種の事情から、18歳を過ぎても障害児入所施設で過ごすことは可能です。しかし、原則としては成人したらグループホームに移ります。
グループホームでは、同じく障害を持つ同年代の方と、共同で生活していくのが基本です。障害児入所施設よりも一歩進み、できる範囲で自立しながら、必要なケアやサポートのみを受けるための施設といえます。
障害児入所施設と近隣の障害者グループホームは、常に情報を共有し、入所者のケアを行っているケースが多いでしょう。
6:児童相談所
この記事でも何度も触れていますが、障害児入所施設に入所する理由でもっとも多いのは家族や保護者による虐待やその疑いがあるケースです。こうした児童虐待に関して、真っ先に調査を行い、状況を把握するのが児童相談所となります。
児童相談所が問題がある家庭を訪問し、その中で虐待がある、もしくはその疑いがあると判断すれば、警察もしくは児童相談所が子どもを保護します。その後の調査や捜査で、家庭や保護者に養育する能力がないと判断した場合、障害児入所施設に子どもを入所させるというのが基本的な流れです。
そのため、障害児入所施設と児童相談所は非常に近い関係性にあり、常に連携しながら子どもたちの保護を行っているといえます。
スカウトサービス登録はこちら8.まとめ
障害児入所施設は、障害を持ち、かつ家庭で日常生活を送ることが難しい子どもたちが入所する障害福祉施設です。障害児入所施設には、福祉型と医療型があり、福祉型では介護を中心に、医療型では医療の提供を中心にサービスを提供しています。
いずれの施設も、最終的には障害を持つ子どもたちが家庭に戻る、もしくは自立して日常生活を送ることを目標としており、そのために必要な知識や技能を身に着けることが目的です。
障害児入所施設では多くの職種の方が連携しながら子どもたちの成長を見守ります。中には未経験者でも担当できる職種もあり、障害福祉に興味がある方にはおすすめの職場といえるでしょう。
障害児入所施設で実務経験を積むことで、資格を手にすることもできますので、自身のキャリアアップという点でも注目度の高い職場といえます。
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