居宅ケアマネってどんな仕事?施設ケアマネとの違いや業務内容を解説
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「施設ケアマネとの違いは何?」「実際居宅ケアマネの年収は高いの?」「居宅ケアマネはどんな仕事をしているの?」
居宅ケアマネについて興味をお持ちのあなたはこんな疑問をお持ちではないですか?
この記事では居宅ケアマネの勤務環境や給与、仕事内容など、居宅ケアマネへの就職・転職を考える上で押さえておきたい情報をまとめました!
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目次
居宅ケアマネとは
居宅ケアマネは、介護保険を利用して自宅で暮らす方が、自立した日常生活を送れるようサポートする専門職です。居宅介護支援事業所に勤務するケアマネのことを、一般的に「居宅ケアマネ」と呼びます。
その上で、食事や入浴の介助、リハビリテーションといった様々な介護サービスの中から、利用者に合ったものを提案。それぞれのサービス事業者と連絡や調整を行い、利用者が安心して在宅生活を続けられるよう支援します。介護サービスと利用者をつなぐ、在宅介護の要となる存在です。
居宅ケアマネと施設ケアマネの違い
支援する方の生活の場所が大きな違いです。
居宅ケアマネは自宅で暮らす方を対象に、外部の介護サービスを組み合わせたケアプランを作成し、在宅生活を支えます。 施設ケアマネは、介護施設に入居している方を対象に、施設内で提供されるサービスを中心にケアプランを作成します。
在宅で生活する方を支えるのが居宅ケアマネ、施設内で生活する方を支えるのが施設ケアマネと覚えておくと良いでしょう。
仕事内容
居宅ケアマネは、利用者宅を訪問して相談に乗ったり、サービス事業者と連携したりと、外出を伴う業務が多いです。
施設ケアマネは、施設内で働くことが基本で、施設内の多職種(介護士、看護師など)と連携してケアプランを作成・実施します。ケアマネジャーが介護業務を兼任する施設もあります。
働き方の特徴
居宅ケアマネは、在宅で生活する利用者に対し、自宅を訪問してケアプランを作成・調整します。担当件数は最大44件程度で、個別のニーズに柔軟に対応します。(居宅介護支援費(Ⅱ)の算定要件を満たしている事業所では最大49件)
施設ケアマネは、特別養護老人ホームなどの施設に入所している利用者に対し、施設内でのケアプランを作成します。担当件数は最大100件と多いですが、利用者と職員が近くにいるため、状態の変化を把握しやすいのが特徴です。
専門性
居宅ケアマネの専門性は、利用者様の生活を多角的に捉え、地域社会と連携する能力にあります。介護保険サービスだけでなく、医療機関、行政、地域のボランティアといった多岐にわたる社会資源を活用し、利用者様の自立した生活を支えます。例えば独居で家事や買い物に不安がある方には、介護サービスに地域の見守りサービスや配食サービスを組み合わせることで、安心して暮らし続けられる環境を整えます。
施設ケアマネは、施設内の専門職としての役割が大きく、入居者の状態変化にいち早く気づき、適切なケアに反映させるスキルが求められます。例えば食欲が落ちている入居者様がいれば、栄養士と連携して原因を探るなど、チームとして迅速に対応します。集団生活におけるケアマネジメントの専門性が磨かれます。
給与
居宅ケアマネと施設ケアマネでは、施設ケアマネの方が給与が高い傾向にあります。その理由は、施設ケアマネは介護業務を兼任するケースも多いため、処遇改善手当や夜勤手当の分居宅ケアマネより給与が高くなる傾向があるためです。
ワークライフバランス
居宅ケアマネは、自分の裁量で訪問スケジュールを組めるため、比較的柔軟な働き方ができます。ただ、事業所によっては利用者からの緊急連絡に備えて、オンコール体制が取られていることもあります。
対して、施設ケアマネはシフト制勤務が基本です。一つの場所で多くの利用者と関われるため、他の職員と密に連携が取れ、緊急時も協力体制を築きやすいのが大きなメリットです。介護業務を兼任する施設ケアマネは、夜勤やオンコールが発生することが多いです。
居宅ケアマネの仕事内容
居宅ケアマネの主な業務は、利用者の状況を把握し、最適な介護サービスを計画・調整することにあります。
相談援助
利用者やご家族の困りごとや要望を最初に聞き取る仕事です。単に話を聞くだけでなく、身体状況、生活環境、価値観などを深く理解し、信頼関係を築くことが最も重要です。この際の丁寧なヒアリングが、その後の支援計画の質を左右します。
アセスメント
利用者の心身の状態や生活の課題を専門的に分析・評価する仕事です。医学的所見や日常生活の様子、家族の介護力などを詳細に把握し、自立した生活を送るために必要な支援を明確にします。個別のケアプランを作成するための基礎を作る業務です。
ケアプラン作成
個々の利用者に合わせた介護計画を作成する仕事です。アセスメントで明らかになった課題や目標に基づき、必要な介護サービスの内容や利用頻度を具体的に定めます。利用者やご家族の意向を尊重し、同意を得た上で最適な計画を立てます。
サービス調整・連携
ケアプランに沿って、関係機関と連絡を取り、サービス利用を調整する仕事です。介護サービス事業者や医療機関などと情報を共有し、利用者がスムーズにサービスを開始できるように手配します。多職種が連携するチームケアの司令塔として、円滑な協力体制を構築します。
モニタリング・評価
サービスの利用状況や利用者の状態を定期的に確認・評価する仕事です。定期的な訪問を通じて、ケアプランが適切に機能しているかを検証し、利用者の心身の変化にも目を配ります。状況に応じてケアプランを見直し、常に最適な支援を継続することが目的です。
給付管理
利用者が利用した介護サービスの費用を計算し、保険者に請求する仕事です。事業所からの実績報告をもとに、介護保険から事業者に支払われる給付費を正確に計算し、事務手続きを行います。この作業によって、介護保険サービスが滞りなく提供されます。
情報提供・関係機関連携
介護に関する情報を伝え、多職種や地域と連携する仕事です。介護保険制度や利用できる地域のサービスについて情報提供を行うとともに、医療機関や行政などと協力関係を築きます。利用者が社会的に孤立しないよう、包括的なサポート体制づくりに貢献します。
1日のスケジュール例
居宅ケアマネが日中どのように働いているか、その一日の流れをご紹介します。出勤後のメールチェックやスケジュール確認から始まり、利用者宅への訪問や関係機関との連携、書類作成など、多岐にわたる業務をこなします。
| 時間 | 業務内容 | 詳細 |
|---|---|---|
| 9:00-9:30 | 出勤・朝礼 | メールチェック、一日のスケジュール確認、チーム内での情報共有。 |
| 9:30-12:00 | 利用者宅訪問 | 新規の利用者宅を訪問し、アセスメントや契約を行う。担当している利用者宅を訪問し、サービス利用状況などを確認。 |
| 12:00-13:00 | 昼休憩 | |
| 13:00-15:00 | 書類作成・電話 | ケアプラン作成、サービス担当者会議の議事録作成、モニタリング報告書作成など。利用者やご家族、サービス事業者との電話での連絡・調整。 |
| 15:00-17:00 | サービス会議 | ケアプランに基づき、利用者やご家族、サービス事業所の担当者と今後の支援方針について話し合う会議に出席。 |
| 17:00-18:00 | 記録・事務処理 | 訪問記録や会議の記録をシステムに入力。翌日の訪問準備、関係機関との情報連携など。 |
| 18:00 | 退勤 |
居宅ケアマネのやりがい
居宅ケアマネの仕事は、利用者様一人ひとりの人生に深く寄り添い、その方の望む暮らしを実現するためのサポートができるため、大きな達成感に繋がります。
利用者さんの「自分らしい生活」を最後まで支えられる
利用者さんと深く関わる中で、「もう一度旅行に行きたい」「自宅で最期を迎えたい」といった、その方の人生における大切な願いや想いに触れることがあります。居宅ケアマネは、そうした利用者さんの「最後の願い」を叶えるためのサポートができる、貴重な仕事です。決して簡単なことではありませんが、利用者さんの想いに寄り添い、実現に向けて奔走する中で、その方の人生にとってかけがえのない存在になれることに、この上ないやりがいがあるでしょう。
多職種連携の中心的な役割で活躍できる
居宅ケアマネは、利用者さんの生活を支えるチームの「要」です。医師、看護師、リハビリ職、ヘルパーなど、各専門職の強みを引き出し、それぞれの意見を尊重しながら、ケアプランという名の解決策を形にする指揮官としての役割を担います。一人では解決できない複雑な課題も、チームの力を結集することで、乗り越えることができる。その達成感が大きなやりがいになります。
居宅ケアマネの大変な点
居宅ケアマネの仕事は、その責任の重さゆえに、精神的・肉体的な負担が伴います。多忙な業務、複雑な人間関係の調整、常に知識を更新し続ける必要性など、様々な大変さが積み重なることで、プレッシャーを感じる場面が少なくありません。
「板挟み」による精神的負担
居宅ケアマネは、利用者本人、その家族、そしてサービス提供事業者や医療関係者といった多岐にわたる関係者の間で、板挟みの状態に置かれます。利用者の希望と介護保険制度の制約や予算、家族の意向と本人の希望など、それぞれの利害が異なる意見を調整しなければなりません。この複雑な人間関係の調整役を担うプレッシャーが、精神的な疲弊の大きな原因となっています。
「更新研修」の負担
居宅ケアマネは、5年ごとに更新研修の受講が義務付けられています。この研修は、制度改正や新たな支援手法を学ぶ有意義な機会である一方で、多忙なケアマネにとっては極めて大きな負担となります。
例えば、研修期間は通常、平日に行われるため、その間の担当業務を止める必要があります。未処理の書類作成やケアプランの調整、利用者からの電話対応などが保留状態になり、研修から戻った際には業務が山積していることもあります。また、数万円程度の研修費用の一部(または全て)は自己負担であり、経済的な負担も軽視できません。
更新研修は専門性向上のために不可欠であるものの、その受講にかかる時間的・金銭的・精神的負担は、一部のケアマネのキャリア継続を困難にしている要因となっています。
居宅ケアマネの年収
令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果(※)によると、ケアマネの年収は約450万円であることが分かります。前述の通り、居宅ケアマネの年収は施設ケアマネより下がる傾向があるため、居宅ケアマネの年収は450万円より低いと想定されます。
※令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果 p.126
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/24/dl/r06kekka.pdf
居宅ケアマネの勤務環境
職場の人数
厚生労働省の「居宅介護支援事業所及び介護支援専門員の業務等の実態に関する調査研究事業」(※)によると、1事業所あたりの常勤職員数は3.0人というデータがあります。
居宅介護支援事業所の収入は、主にケアマネジメント業務に対する介護報酬で成り立っています。この報酬は、利用者1人あたりの金額が定められているため、職員数を増やすと人件費が増えて経営を圧迫する可能性があるようです。
年齢層
厚生労働省の「幅広い世代に対するケアマネの人材確保・定着に向けた取組について」(※)によると、ケアマネの年齢構成は、高齢化の進行と若年層の減少という二つの傾向を示しています。
特に2017年から2022年にかけて、60歳以上のケアマネの割合が顕著に増加しており、職種全体の高齢化が加速しています。一方で、45歳未満の割合は2011年以降、継続して低下しています。
※https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001306425.pdf
男女比
介護支援専門員実態調査結果(厚生労働省)(※)によると、男性が17%、女性が83%となっています。居宅ケアマネは、介護福祉士や看護師、社会福祉士などの実務経験者がなります。介護・福祉・医療分野は全体として女性の割合が非常に高いため、母集団からして女性が多数を占めることになるようです。
※https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/02/s0223-8i2.html
居宅ケアマネに向いている人・施設ケアマネに向いている人
同じケアマネでも、働き方や適性は大きく異なります。それぞれが持つ特性を理解することで、自分に合ったキャリアを見つけることができます。
居宅ケアマネに向いている人
臨機応変な対応力と調整力がある人が向いています。居宅ケアマネは、利用者さんの生活の場である自宅を訪問し、一人ひとりの生活スタイルや家族環境に合わせてケアプランを作成します。そのため、イレギュラーな事態にも柔軟に対応し、多職種と連携・調整していく力が不可欠です。複数の利用者さんの状況を把握し、自立した生活を支えることにやりがいを感じる人に向いているでしょう。
施設ケアマネに向いている人
一つの施設でじっくりと利用者さんと向き合いたい人が向いています。施設ケアマネは、利用者さんの日々の変化を直接観察し、利用者さんと深く関わることができます。施設内の多職種との連携が中心となるため、チームケアを重視し、組織的な動きの中で利用者さんの支援を進めていくことが得意な人に向いています。また、入退所の手続きや施設内の調整業務も多いため、事務処理能力や施設運営への関心がある人も適しています。
居宅ケアマネのキャリアパス
居宅ケアマネのキャリアは多岐にわたります。ここでは、経験年数に応じた働き方や、得られるスキル、年収の目安をまとめました。
| 目安となる年数 | キャリアパスの選択肢 | 概要・働き方 | 得られるスキル | 年収の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 1年目〜3年目 | 基礎固め・専門性向上 | 主任ケアマネや先輩の指導のもと、担当ケースを持ち、実務を覚える時期です。 | 介護保険制度の知識、多職種との調整力、利用者やご家族との信頼関係を築くコミュニケーション能力 | 約350万円〜450万円 |
| 5年目以降 | 専門性を深める | 主任ケアマネとして、他のケアマネを指導したり、困難なケースの相談に乗ったりします。責任が大きくなりますが、裁量も増えます。 | リーダーシップ、コンサルティング能力、より高度なマネジメントスキル | 約450万円〜550万円 |
| 5年目〜10年目以降 | 管理職を目指す | 事業所の管理者として、ケアマネ業務に加え、経営や人事、労務管理など事業所全体の運営を担います。 | 組織運営、マネジメント、事業計画立案といったビジネススキル | 約500万円〜650万円 |
良い居宅介護支援事業所を選ぶには
「居宅ケアマネ」として充実したキャリアを築くためには、最初の職場選びが非常に重要です。求人情報だけでは見えにくい、本当に良い事業所を見分けるための3つのポイントをご紹介します。
教育・研修体制が充実しているか
介護保険制度は頻繁に改正されるため、居宅ケアマネとして働くうえでは学び続ける姿勢が不可欠です。未経験でも安心して学べるよう、研修やOJTがしっかりしている事業所を選びましょう。教育に力を入れているのは、職員を大切にしている証拠です。そのため、教育以外の面でも働きやすさを感じられる可能性が高いでしょう。また、主任ケアマネなどの上位資格取得をサポートしてくれる事業所なら、キャリアアップも目指せます。
働きやすい職場環境と人間関係があるか
仕事内容がいくら魅力的でも、職場の人間関係が悪いと続けるのが難しくなります。困った時に上司や同期にすぐに相談できる、風通しの良い事業所を選びましょう。ケアマネの仕事は一人で抱え込みがちですが、チームで情報共有し、お互いに助け合うことで、質の高いケアプランにつながります。
「特定事業所加算」を取得しているか
「居宅ケアマネ」として質の高い仕事をしたいなら、「特定事業所加算」を取得している事業所を選ぶのが良いでしょう。この加算は、質の高いケアマネジメントを行っている優良な事業所であることを国から認められている証です。
この加算を取得している事業所は、手厚い人員配置が義務付けられているため、一人ひとりのケアマネが担当する件数が少なく、利用者とじっくり向き合える環境が期待できます。また、この加算は事業所の収益増につながるため、給与や待遇に反映される可能性が高いです。
まとめ
居宅ケアマネは、在宅で生活する方の自立を支える、地域包括ケアの要となる存在です。施設ケアマネとは異なり、利用者様一人ひとりの生活に深く寄り添い、多岐にわたる地域の社会資源を組み合わせて、その方らしい暮らしを実現する役割を担います。
仕事内容は多岐にわたり、相談援助からケアプラン作成、サービス調整、給付管理まで、専門性と調整能力が求められます。責任の重さや多忙さ、人間関係の調整といった大変な面もありますが、利用者様の「自分らしい生活」を支えられたときのやりがいは、何物にも代えがたいでしょう。
良い事業所を選ぶ際は、「教育・研修体制」「働きやすい職場環境」「特定事業所加算の有無」の3点をチェックすることが重要です。これらを判断基準にすることで、自身のキャリアプランに合った、働きがいのある職場を見つけることができるでしょう。