地域包括支援センターのケアマネージャーはどんな仕事?居宅・施設ケアマネとの違いについて解説
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「居宅・施設ケアマネとの違いは何?」「民間採用か公務員採用かによって実際何が違うの?」「地域包括支援センターのケアマネージャーはどんな仕事をしているの?」
地域包括支援センターのケアマネージャーについて興味をお持ちのあなたは、こんな疑問をお持ちではないですか?
この記事では地域包括支援センターのケアマネージャーの業務内容、必要なスキル、雇用形態による違いなどについて、居宅・施設ケアマネとの違いに焦点を当ててまとめました!
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目次
地域包括支援センターとは
地域包括支援センターは、地域に住む高齢者の暮らしを総合的にサポートするために、市区町村が設置する公的な相談窓口です。介護保険法に基づき、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できるよう、さまざまな支援を提供しています。ケアマネジャーの他に、社会福祉士、保健師(または経験のある看護師)といった専門職が常駐しており、多職種が連携して高齢者の生活を支えています。
地域包括支援センターには、主任ケアマネジャーの配置が義務付けられています。これは、主任ケアマネジャーが、センター内のケアマネジャーを指導したり、地域のケアマネジャーへの支援を行ったりすることで、地域全体のケアマネジメントの質を確保する役割があるためです。したがって、センターで働くケアマネジャー全員が主任ケアマネジャーである必要はありませんが、センターの運営には不可欠な存在です。
地域包括支援センターのケアマネージャーの業務内容と一日の流れ
地域包括支援センターで働くケアマネージャーは、居宅介護支援事業所や施設ケアマネージャーと比べて、より幅広い業務を担います。個々人のケアプラン作成だけでなく、地域全体の高齢者を支えるための総合的な業務が求められるのが特徴です。
総合相談支援
高齢者やそのご家族からの多様な相談に専門家がワンストップで対応します。「介護サービスを利用するにはどうすればいい?」「近所の高齢者の様子がおかしいけど…」といった、福祉や介護に関するあらゆる不安や悩みに耳を傾け、必要な情報提供やアドバイスを行います。相談内容に応じて、行政サービス、医療機関、民間の支援団体など、多岐にわたる地域の社会資源を適切に組み合わせ、ご本人の自立した生活を総合的にサポートします。
権利擁護
高齢者が地域で安心して暮らせるよう、尊厳ある生活を守るための支援を行います。悪質な詐欺や消費者被害といったトラブルの未然防止に向けた啓発活動のほか、身体的・精神的な虐待の早期発見や対応にも力を入れています。また、判断能力の低下により財産管理が困難になった方には、成年後見制度の利用を支援するなど、法的・制度的な側面からも権利を守ります。
包括的・継続的ケアマネジメント支援
地域全体のケアマネジメントの質の底上げをし、高齢者が住み慣れた地域で、生涯にわたって切れ目のないサービスを受けられるようにします。地域のケアマネジャーが抱える困難なケースについて専門的な助言を行い、連携して解決に導きます。さらに、地域の医療・介護関係者、ボランティア団体などと連携ネットワークを構築し、個々の高齢者だけでなく、地域全体で高齢者を支え合う仕組みづくりを進めます。
介護予防ケアマネジメント
「要介護状態になることを防ぐ」という視点から、高齢者の自立を支援します。要支援認定を受けた方や、将来的に介護が必要となるリスクのある方(特定高齢者)一人ひとりの心身の状態や生活環境を評価し、介護予防計画を作成します。具体的には、運動機能向上のための体操教室の紹介や、栄養改善のための助言、閉じこもりを解消するための社会参加活動の提案などを通じて、健康で活動的な生活を継続できるようサポートします。
1日のスケジュール
地域包括支援センターのケアマネージャーは、相談対応や多職種連携が多いため、日によって業務内容は異なりますが、一般的には下記のようなスケジュールで一日を過ごします。
| 時刻 | 業務内容 |
|---|---|
| 8:30〜 | 出勤、朝礼、事業所内ミーティング、 一日のスケジュール確認、保健師・社会福祉士との情報共有 |
| 9:00〜 | 総合相談(来所・電話での高齢者や家族からの相談対応)、権利擁護に関する書類作成(成年後見制度の紹介など) |
| 10:00〜 | 介護予防ケアマネジメント(新規要支援者の初回面談・アセスメント訪問、介護予防ケアプラン作成) |
| 12:00〜 | 昼休憩 |
| 13:00〜 | 地域ケア会議の準備・参加、地域包括支援ネットワーク(多職種・関係機関)との連絡・調整 |
| 15:00〜 | 包括的・継続的ケアマネジメント支援(地域の居宅ケアマネからの困難事例相談対応・指導助言、同行訪問) |
| 16:00〜 | 相談支援経過記録の作成、地域資源の把握・整理、介護予防教室等の企画準備 |
| 17:30 | 終業 |
周りの職員との連携
地域包括支援センターでは多職種連携によって、ケアマネジャーの専門分野を超えた幅広い課題に対応し、福祉、医療、生活全般の視点から質の高い総合的な支援を届けています。
社会福祉士との連携
社会福祉士は、経済的な問題や虐待、権利擁護といった、生活全般にわたる福祉の専門家です。ケアマネジャーが介護保険サービスを主軸に考えるのに対し、社会福祉士は利用者の生活全体を俯瞰し、福祉制度や金銭管理、法的な支援といった側面からサポートを提供します。特に、高齢者の虐待が疑われるケースや、成年後見制度の利用が必要なケースでは、社会福祉士と密に連携を取り、相談者の権利を守るための専門的な支援を行います。
保健師との連携
保健師は、高齢者の健康や疾病予防に特化した医療の専門家です。ケアマネジャーがケアプランを通じて生活の支援を行うのに対し、保健師は健康管理や医療的な側面から助言を行います。利用者の健康状態が悪化した場合や、生活習慣病の予防、栄養改善、運動指導など、医療的な専門知識が必要な場面で連携を図ります。特に、在宅生活の継続を目的とした介護予防計画を作成する際には、保健師の専門的な視点が不可欠です。
利用者の特徴
これまでは、地域包括支援センターのケアマネジャーが、主に介護予防支援を担当していました。しかし、近年の制度改正により、居宅介護支援事業所は市町村の「指定」を受けることで、地域包括支援センターからの委託なしに、介護予防支援を実施できるようになりました。従って、現在では下記のように役割分担されています。
| 項目 | 地域包括支援センターのケアマネージャー | 居宅介護支援事業所のケアマネージャー | 施設ケアマネージャー |
|---|---|---|---|
| 対象者の範囲 | 要支援者(要支援1・2)、特定高齢者(介護予防・生活支援が必要な方)、および地域住民全般 | 要介護者(要介護1〜5)および市町村の指定を受けた上で担当する要支援者 | 施設入所者(介護老人福祉施設、介護老人保健施設など) |
| 主な業務内容 | ・介護予防計画の作成 ・総合相談支援 ・地域のネットワークづくり ・権利擁護 |
・居宅介護サービス計画(ケアプラン)の作成 ・サービス事業者との連絡、調整 ・モニタリング(状況確認) |
・施設サービス計画の作成 ・施設内でのサービス調整 ・利用者や家族との面談 |
| 主な連携先 | ・社会福祉士、保健師(センター内) ・地域包括支援センター管内の介護サービス事業所 ・民生委員、地域住民、医療機関 |
・訪問介護事業所、デイサービスなど ・主治医、看護師 ・福祉用具貸与事業所 |
・施設内の介護職員、看護職員、リハビリ専門職など ・嘱託医 |
地域包括支援センターのケアマネージャーのやりがいと大変な点
地域包括支援センターでの勤務は、地域包括ケアシステムの実現に深く関わるという点で、他のケアマネージャーの働き方とは異なる、独自の魅力と困難を併せ持っています。
やりがい
「点」ではなく「面」で高齢者を支える社会貢献性
居宅や施設のケアマネジャーが、一人ひとりの利用者や入所者のケアプラン作成に専念する「点」の支援であるのに対し、地域包括支援センターのケアマネジャーは、地域に住むすべての高齢者の生活を支える「面」の支援を行います。地域のニーズを把握し、介護予防事業を企画したり、高齢者虐待の防止に取り組んだりすることで、まだ介護サービスを必要としない段階の高齢者の生活にも深く関わります。これにより、地域社会の基盤を支えているという大きな達成感を得ることができます。
多角的な視点から専門性を高める多職種連携
地域包括支援センターでは、センター内にいる社会福祉士や保健師と日常的に連携します。ケアプランだけでは解決できない金銭トラブルや精神的な問題、健康管理に関する相談など、複合的な課題に対して、専門家同士が知恵を出し合うことができます。これにより、自身のケアマネジメントの知識やスキルが向上し、専門職としての成長を実感できます。
大変な点
「何でも屋」としての業務範囲の広さ
居宅や施設のケアマネジャーの業務は、主にケアプラン作成とサービス調整に集中しています。しかし、地域包括支援センターは「総合相談窓口」であるため、ゴミ屋敷や近隣トラブル、家族関係の問題など、介護保険制度の枠組みを超えた相談が寄せられます。定型的な業務が少なく、イレギュラーな対応が多く発生するため、精神的な負担を感じる場合があります。
複雑な人間関係の調整役
居宅ケアマネが主にサービス事業者と、施設ケアマネが主に施設内の職員と連携するのに対し、地域包括支援センターのケアマネジャーは、地域の医療機関、民生委員、ボランティア団体、自治会など、多種多様な立場の人々と関わります。それぞれの利害や考え方が異なるため、地域の課題解決に向けて関係者をまとめ、協力を得るための調整には高いコミュニケーション能力が必要です。人間関係の構築と維持に労力を要するため、対人ストレスを感じやすい側面もあります。
地域包括支援センターのケアマネージャーの年収
地域包括支援センターで働くケアマネの年収は、居宅や施設のケアマネと比較して、公務員に準じた安定した水準となる傾向があります。その主な理由は、収益構造の違いです。居宅や施設のケアマネは、ケアプラン作成など、提供サービスに応じた介護報酬が主な収益源です。担当件数や施設の入居率が収益に直結するため、運営がうまくいっている事業所では給与が高くなりやすい仕組みです。
一方、地域包括支援センターは市町村が設置主体であり、直営または社会福祉法人などへの委託で運営されています。そのため、収入源は公費や委託料が中心です。営利を目的としないため、公務員に準じた安定した水準となりますが、個人の実績による大幅な昇給や高額なインセンティブは期待しにくい傾向にあります。
地域包括支援センターでケアマネージャーとして働くうえで必要なスキル
地域包括支援センターは、居宅や施設で培った経験を活かし、さらなる専門性を追求できる仕事です。ここでは、勤務するうえで求められるスキルについて解説します。
求められるスキルと人物像
地域包括支援センターのケアマネジャーには、居宅や施設ケアマネジャーとは異なり、地域全体の課題を解決する「ジェネラリスト」としての役割が求められます。センターに寄せられる相談は、介護保険の枠組みを超えた相談がほとんどです。例えば、「隣の高齢者の家から異臭がする」「近所の高齢者が万引きをして困っている」といった、他のケアマネジャーの仕事の範疇を超えた多種多様な相談が寄せられます。
これらの複雑な課題を解決するには、介護・医療の知識に加え、福祉や法律など幅広い知識が求められます。さらに、民生委員、ボランティア団体、自治会、そして町内会の顔役といった多様な人々を巻き込む高いコミュニケーション能力も不可欠です。
選考にあたって年齢制限はある?
地域包括支援センターのケアマネジャーの採用において、定年を理由とした年齢制限を設けている事業所もあるものの、多くのケースではこれまでの経験やスキルが重視され、年齢を気にせず応募できる傾向が強いです。多くの求人情報で「年齢不問」や「経験者優遇」とされているのは、この職種が年齢を重ねて得られる経験やスキルを高く評価するからです。
転職を検討している場合、年齢を気にすることなく、これまでのケアマネジャーとしての経験や、人との関わりの中で培ってきた対応力をアピールすることが、採用を勝ち取るための大きな鍵となるでしょう。
地域包括支援センターでケアマネージャーになるためのステップ
地域包括支援センターの採用試験は、居宅や施設のケアマネージャーとは異なる点がいくつかあります。個別ケースの対応能力だけでなく、より広い視点が求められるためです。
採用試験の内容
居宅・施設ケアマネとの決定的な違いは、論述・作文や専門知識の範囲です。
論述・作文のテーマ
居宅や施設での試験が「個別事例の課題解決」に焦点を当てるのに対し、包括の試験では「高齢者虐待防止における地域の役割」「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)の推進」など、地域福祉政策や行政計画に関するテーマが頻出します。あなたの意見を感情論ではなく、公的な根拠や制度の目的に基づいて論理的に記述する力が求められます。
専門知識
公務員採用の場合、介護保険制度の知識に加えて、地方自治法や公務員倫理など、行政職としての基礎知識が問われることもあります。これは、地域包括支援センターのケアマネージャーが市町村の政策実現の担い手として期待されている証拠です。
事前準備
地域包括支援センターへの転職を成功させるには、居宅・施設ケアマネとしての経験に加え、「地域を動かす行政視点」を身につける戦略的な準備が不可欠です。まず、制度の枠を超えた「地域課題の発見力」と「企画力」を磨くことが重要となります。単なるサービス調整で終わらせず、例えば、住民が主体となる介護予防サロンの立ち上げや、孤立しやすい高齢者のための見守りネットワークの構築など、ボランティアやNPOといった介護保険外の地域資源を巻き込んだ事業の企画・運営に携わる経験を意識的に積むことができれば、大きなアドバンテージとなります。
地域包括支援センターのケアマネージャーの雇用形態によって異なる点
地域包括支援センターの採用は、公務員として自治体に直接雇用されるパターンと、社会福祉法人などの民間法人に雇用されるパターンの二つに大別されます。これは単に給与を支払う「雇用主が違う」という話に留まりません。あなたのケアマネジャーとしての専門性の深め方、キャリアの展開、そして待遇の安定性にまで、決定的な違いをもたらします。キャリアプランと照らし合わせ、どちらがご自身にとって最適な道かを見極めましょう。
公務員採用のケアマネジャー
公務員採用の魅力は、地方公務員としての身分保障です。行政の正規職員として、給与は自治体の規定に基づき安定しており、年功序列の傾向が強く、将来にわたる経済的な不安は少ないでしょう。充実した福利厚生や、長期休暇が取得しやすい環境も公務員ならではのメリットです。
また、ケアマネジャーとしての経験を活かしつつ、行政の幅広い分野で活躍できる可能性を秘めている点も特徴です。地域包括支援センターでの勤務後、福祉部門の企画立案や、住民サービスの統括など、部署異動を通じて多様なキャリアを築くことができます。ただし、専門性を極めたいと考える人にとっては、ケアマネジメント業務から離れる可能性があることを理解しておく必要があります。
民間採用のケアマネジャー
民間法人の地域包括支援センターで働く魅力は、専門職としてのキャリアの一貫性と成果に見合った報酬を追求できる点です。
公務員(直営)の場合、行政の異動方針に基づき、数年で全く異なる部署へ配置転換される可能性があります。一方、民間法人では、異動が同じ法人内の居宅介護支援事業所や施設などに留まることが多く、ケアマネジメント業務に継続的に携わり、専門職としてのスキルを深く磨き続けることができます。
また、給与や待遇は各法人の規定に準じます。給与体系は、法人の経営状況や個人の実績によって変動することがあり、能力や成果に応じて公務員型の給与体系よりも高い報酬を得られる可能性も秘めています。
まとめ
地域包括支援センターのケアマネージャーは、居宅・施設ケアマネージャーが「点」で個々の高齢者を支援するスペシャリストであるのに対し、多職種と連携しながら、地域全体を「面」で支えるジェネラリストです。公費を財源とする安定した雇用形態により、長期的な安心感が得られます。さらに、給与だけでは測れない「社会貢献」という大きな価値や、公務員として多様なキャリアパスが描ける可能性があることも、地域包括支援センターのケアマネージャーの大きな魅力です。