変形労働時間制とは?種類やメリットデメリットをわかりやすく解説!
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「変形労働時間制って記載している求人があるけど、どういう意味?」
「変形労働時間制を採用している企業はブラックなの?」
「変形労働時間制と他の労働時間制度、どの種類が働きやすい?」
このような悩みはありませんか?
本記事では、変形労働時間制の概要やメリット・デメリット、他の労働時間制度の違いを解説します。この記事を読めば、変形労働時間制についての理解が深まり、どの労働時間制度が働きやすいかを判断するための参考になるでしょう。ぜひご一読ください。
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1.変形労働時間制とは?
変形労働時間制とは、労働時間を週・月・年単位で柔軟に調整できる制度です。労働基準法では法定労働時間を「1日8時間・週40時間まで」と定めています。1日10時間働くと、超えた2時間は「時間外労働(残業)」扱いです。
しかし、変形労働時間制を採用することで、「1日8時間・週40時間まで」の法定労働時間を調整できるようになります。たとえば、「この日は10時間働くけれど、別の日は6時間に短縮して調整する」などです。
その結果、通常は週の労働時間が40時間を超えるところを、変形労働時間制により、週40時間以内におさめることが可能になります。24時間稼働している病院や介護施設は、変形労働時間制を採用していることが多いです。
スカウトサービス登録はこちら2.変形労働時間制の種類は4つ!
変形労働時間制と一口に言っても、以下の4種類があります。
- 1年単位の変形労働時間制
- 1ヶ月単位の変形労働時間制
- 1週間単位の変形労働時間制
- フレックスタイム制
厚生労働省が公表しているデータによると、変形労働時間制を採用している企業の割合は、全体の59.3%となっています。つまり、半数以上の企業が変形労働時間制を採用しているということです。
種類別の採用割合をみると、1年単位の変形労働時間制が31.5%、1ヶ月単位が24.0%、フレックスタイム制が6.8%となっています。週単位のデータがない理由は、ほとんど採用されていないからです。
以下では、変形労働時間制の種類について解説します。
1年単位の変形労働時間制
1年単位の変形労働時間制は、1年間でみた平均労働時間を法定労働時間内に調整できる制度です。
たとえば、「1〜3月が繁忙期だから労働時間を1日9時間にし、4〜7月は閑散期だから1日7時間に短縮しよう」ということが可能になります。
1年単位の変形労働時間制を採用するためには、以下の事項を定めなければなりません。
- 対象期間を1ヶ月以上1年以内に設定
- 労働時間は1日10時間、週52時間以内
- 対象期間の週平均労働時間が40時間を超えない
- 1年あたりの労働日数の限度は280日
- 連続して労働させる日数の限度が6日
上記を遵守し、年間の就業時間数が、年間法定労働時間内におさまるようにする必要があります。
暦日数 | 法定労働時間の総枠 |
---|---|
365日 | 2085.7時間 |
366日(うるう年) | 2091.4時間 |
厚生労働省の令和5年就労条件総合調査によると、1年単位の変形労働時間制の採用率が高い業種は、「鉱業・採石業・砂利採取業59.6%」「製造業53.2%」「建設業50.2%」「教育・学習支援業49.7%」「運輸業・郵便業45.1%」となっています。
1ヶ月単位の変形労働時間制
1ヶ月単位の変形労働時間制は、対象期間を1ヶ月以内とし、平均して1週間あたりの労働時間が40時間を超えなければ、法定労働時間を超えても残業とはみなされない制度です。
厚生労働省の令和5年就労条件総合調査によると、1ヶ月単位の変形労働時間制の採用率の高い業種は、「電気・ガス・熱供給・水道業50.2%」「医療・福祉49.4%」となっています。
具体的な例として、月初と月末の週が繁忙期で、月中の2週が閑散期だと考えます。月初と月末の週の労働時間を平均45時間にし、月中の2週を平均35時間にすることで、1ヶ月の法定労働時間(目安160時間)を超えないように調整が可能です。
【一般的な労働時間制の例】
- 1週目:45時間→5時間の残業
- 2週目:40時間
- 3週目:40時間
- 4週目:45時間→残業発生
- 月合計:170時間→10時間分の残業代発生
【1ヶ月単位の変形労働時間制の場合】
- 1週目:45時間→残業扱いにならない
- 2週目:35時間→労働時間を短縮
- 3週目:35時間→短縮
- 4週目:45時間→残業にならない
- 月合計:160時間
1週間単位の変形労働時間制
1週間単位の変形労働時間制は、週の平均労働時間や休日を調整できる制度です。所定労働時間を週40時間以内、1日10時間以内と定め、それを超える分には残業代を払う必要があります。たとえば、以下のような調整が可能です。
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
合計 |
1日7時間 |
7時間 |
8時間 |
9時間 |
9時間 |
40時間 |
上記の例では、通常の労働時間制であれば、木曜日と金曜日に1時間の残業代が出るはずです。しかし、週40時間以内に労働時間がおさまっているので、残業代は発生しません。
ただし、1週間単位の変形労働時間制の対象は、規模30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店に限られています。
フレックスタイム制
フレックスタイム制は、一定期間で定めた総労働時間の範囲内であれば、始業時間・終業時間、その日の労働時間を労働者が決められる制度です。
たとえば、月の総労働時間を160時間と定めた場合、その範囲内であれば、1日10時間働く日や6時間だけ働く日があってもよいということです。
ただし、24時間いつでも出退勤できるわけではありません。フレックスタイム制を採用する企業は、1日の中で必ず勤務しなければならない「コアタイム」、いつでも出退勤してもよい「フレキシブルタイム」を設けることが可能です。
厚生労働省の令和5年就労条件総合調査によると、フレックスタイム制の採用率が高い業種は、「情報通信業34.4%」「学術研究・専門・技術サービス業21.6%」となっています。
医療福祉業界は変形労働時間制が多い?
医療・福祉業界は、1ヶ月単位の変形労働時間制を採用していることがほとんどです。それは、医療・福祉が夜勤がある業界だからです。医療機関や介護施設で2交代制の夜勤をした場合、夜勤の勤務時間は17時間前後となります。
これは、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えているため、通常であれば法律違反です。そこで、1ヶ月単位の変形労働時間制を採用することで、1回の勤務時間が法定基準(1日8時間)を超えても問題なくなります。
スカウトサービス登録はこちら3.変形労働時間制のメリット
変形労働時間制を採用するメリットは以下のとおりです。
企業側のメリット | 従業員側のメリット |
---|---|
・残業代の削減 ・業務効率が向上する ・働きやすい職場環境をアピールできる |
・健康管理がしやすい ・ワークライフバランスを実現しやすい ・仕事のモチベーションを維持しやすい |
会社側は残業代の削減でコストカットができ、従業員はメリハリをつけて仕事できる点が主なメリットとなります。それぞれのメリットを具体的に解説します。
変形労働時間制の企業側のメリット
変形労働時間制を採用する企業側の主なメリットは以下の3つです。
繁忙期・閑散期がある業種の場合は、法定労働時間(1日8時間)を超えて働く日が生じるため、企業からすれば残業代がかかります。変形労働時間制を採用して所定労働時間を調整すれば、1日の労働時間が8時間を超えても残業代は発生しません。
業務量に応じて労働時間を配分できるため、繁忙期と閑散期の人的リソースの最適化や業務効率化が図れます。仕事の状況に応じて労働時間を変えることで、従業員一人ひとりの生産性の向上にもつながるでしょう。
労働時間の最適化により、従業員を適切に管理しているため、働きやすい職場環境をアピールできます。社内外へ働きやすさの認識が広がれば、採用活動が活発化するほか、従業員の定着率の向上も期待できるでしょう。
変形労働時間制の労働者側のメリット
労働者側のメリットを解説します。
過度な労働時間を防げるため、従業員の体調不良や過労の防止に効果的です。月間の労働時間があらかじめわかっていると、従業員は生活リズムを整えやすく、健康管理がしやすくなります。
繁忙期と閑散期にメリハリをつけることで、休暇が取りやすくなり、プライベートの充実につながります。繁忙期は忙しいですが、閑散期は連休を取得したり、1日の労働時間を短くしたりなど、プライベートの時間を確保しやすい点がメリットです。
従業員は繁忙期と閑散期をあらかじめ想定したうえで働けます。たとえば、「今は忙しいけれど、この期間が過ぎたら思いっきり休める」など、モチベーションの維持がしやすいのがメリットです。
スカウトサービス登録はこちら4.変形労働時間制のデメリット
変形労働時間制を採用するデメリットは以下のとおりです。
企業側のデメリット | 従業員側のデメリット |
---|---|
・導入に手間がかかる ・従業員から不満が出る可能性がある ・スケジュール調整が難しい場合がある |
・繁忙期は労働時間が長くなる ・残業代が減る ・閑散期でも残業が発生する可能性がある |
変形労働時間制のデメリットは、導入手続きに手間がかかることでしょう。従業員ごとに労働時間がバラつくため、勤怠管理や賃金計算が複雑になります。
また、導入するにあたって、就業規則の改定や労使協定の締結が必要です。それが完了すれば、企業はその旨を従業員に周知させる義務があります。なかには、従業員から不満の声が挙がるかもしれません。
従業員側としては、変形労働時間制によって労働時間が調整されるので、残業代がでない可能性があります。残業代を期待している方にとってはデメリットになるでしょう。
変形労働時間制を採用する企業側のデメリットを解説します。
変形労働時間制を導入する場合、企業が自由にはじめていいわけではなく、届出を行う必要があります。また、就業規則の変更と労使協定の締結も必要です。届出義務を怠ると、労働基準法違反となり、30万円以下の罰則が科せられます。
変形労働時間制の採用にあたって、一部の従業員から不満が出るかもしれません。「労働時間が増えてもいいから残業代を減らしてほしくない」と考える方が一定数いるからです。従業員から不満が出る可能性があり、理解してもらう大変さはデメリットでしょう。
変形労働時間制は、日や週ごとに所定労働時間を設定するため、勤怠管理や賃金計算が複雑化しがちです。さらに、一部の部署にだけ変形労働時間制を採用する場合、部署によって始業・終業時間が異なります。そのため、スケジュール調整が困難になる可能性もあるでしょう。
変形労働時間制の労働者側のデメリット
次に労働者側のデメリットを解説します。
変形労働時間制によって、総労働時間を抑えられるとは言っても、繁忙期は労働時間が長くなります。繁忙期は休暇が取りづらく、プライベートの時間を確保するのが難しくなり、人によってはデメリットに感じるでしょう。
残業代の削減は企業にとってはメリットですが、従業員にとってはデメリットになりえます。たとえば、所定労働時間が10時間に設定した場合、労働時間が10時間を超えなければ残業代は発生しません。その分、閑散期に労働時間が短縮されるメリットはありますが、残業代を当てにしている従業員にとってはデメリットになるでしょう。
閑散期とはいえ、思わぬ残業が発生する場合があります。所定労働時間を超えた分はしっかり残業代が支払われますが、総労働時間は増えるため、従業員には負担がかかるでしょう。企業によって業務量は異なるため、あらかじめ確認しておくと安心です。
スカウトサービス登録はこちら5.変形労働時間制と他の労働時間制度の違い
ここでは、変形労働時間制以外の労働時間制度について解説します。その前に、現行の労働時間制度について改めて理解しておきましょう。
現行の労働時間制度では、「1日8時間・週40時間を超えて労働させてはならない」という「法定労働時間」が定められています。法定労働時間を超える場合(残業)は、「36協定」という労使協定を企業と労働者が結ばなくてはなりません。
また、残業または深夜労働が発生した場合は、従業員に通常賃金の25%以上の割増賃金を支給する必要があります。
これらの点を踏まえて、他の労働時間制度について見ていきましょう。
変形労働時間制と固定労働時間制の違い
固定労働時間制はその名のとおり、従業員の労働時間を固定する働き方です。「月曜日から金曜日まで働き、土日は休む」といった法定労働時間(1日8時間・週40時間)を遵守した勤務形態になります。
「平日9時から18時まで勤務」など、あらかじめ労働時間が固定されているので、「プライベートの予定が立てやすい」という点がメリットです。しかし、勤務日が平日に固定されている場合は、平日のみ営業している行政機関や金融機関に行きにくいデメリットもあります。
また、固定労働時間制は、閑散期で業務量が少ない期間でも決められた時間に働く必要があります。一方で変形労働時間制は、一定期間のなかで労働時間を調整できるため、効率的に働ける点が違いです。
変形労働時間制とみなし労働時間制の違い
みなし労働時間制とは、実際に働いた時間にかかわらず、あらかじめ決められた労働時間を働いたとみなして給与を支払う制度です。以下の2種類があります。
- 事業場外のみなし労働時間制
- 裁量労働制(専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制)
裁量労働制については次で解説します。
事業場外のみなし労働時間制は、在宅勤務や営業など、実労働時間の把握が難しい仕事に採用されることが多いです。
たとえば、労使協定によって定めた労働時間を8時間としましょう。みなし労働時間制では、実際に働いた時間が6時間だったとしても8時間働いたとみなし、8時間分の給料が支払われます。
一方、実際に働いた時間が10時間でも、「8時間働いたとみなされる」ため、2時間分の残業代は発生しません。変形労働時間制は規定の労働時間を超えると、残業代が支払われます。
変形労働時間制と裁量労働制の違い
裁量労働制は、実際に働いた時間ではなく、企業と労働者との間で定めた一定の時間を「労働時間」とみなし、給与が支払われる制度です。労働者の裁量で仕事の進め方や労働時間を決められます。
裁量労働制は、職種に応じて以下の2つに分類されています。
- 専門業務型裁量労働制
- 企画業務型裁量労働制
裁量労働制の大きな特徴は、業務を遂行する手段や方法、時間配分などを労働者の裁量にゆだねる点です。しかし、変形労働時間制は労働者に裁量は与えられず、会社の指示に従って業務を進める必要があります。
また、裁量労働制では、労使協定で定めた「みなし労働時間」を超えた分の残業代は支払われません。変形労働時間制では、所定労働時間を超えた分は残業代が支払われます。
変形労働時間制とシフト制の違い
シフト制は、一定期間(1週間、1ヶ月など)ごとに作成される勤務シフトなどで、労働日や労働時間を確定する勤務形態です。医療・福祉業界にも取り入れられており、たとえば、「早番・遅番・夜勤」といったパターンを従業員の都合に合わせて配置し、交代制で業務を行います。
ここで、「変形労働時間制と似ている」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、2つは似ているようでまったく異なる制度です。
変形労働時間制は、繁忙期や閑散期の業務量に合わせて所定労働時間を調整できる制度です。そのため一定の要件を満たせば、1日8時間・週40時間を超える所定労働時間を設定できます。
一方でシフト制は、あらかじめ勤務日や勤務時間をシフトで決めますが、所定労働時間を1日8時間・週40時間を超えて設定することはできません。
スカウトサービス登録はこちら6.まとめ
変形労働時間制とは、本来、1日8時間・週40時間を超えて労働させてはならないところを、一定期間内であれば労働時間を柔軟に調整できる制度です。医療・福祉業界は、夜勤があるため、1ヶ月単位の変形労働時間制を採用していることが多いです。
企業側は労働時間の最適化で残業代削減や業務効率化を図れて、従業員側はメリハリのある働き方ができるメリットがあります。「変形労働時間制は残業代が支払われない」と思う方もいらっしゃいますが、所定労働時間を超えた分は支給されます。
しかし、変形労働時間制は勤怠管理が複雑なため、企業側が誤った運用をしている可能性もゼロではありません。そのため、働く側も変形労働時間制について理解し、自分の権利が守られているか確認することが大切です。
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