調剤薬局で働く管理栄養士の仕事内容とは?年収、やりがいと大変さ、向いている人まで
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「薬局に管理栄養士がいるって、意外に思いませんか?」
この記事では、今注目を集めている薬局で働く管理栄養士の仕事について、その理由、具体的な業務内容、給料事情などを分かりやすく解説します。
この記事を読むことで、「薬局の管理栄養士ってどんな働き方なんだろう?」という疑問が解消され、あなたの今後のキャリアを考える上で役立つヒントが得られるはずです。ぜひ最後までお付き合いください。
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目次
なぜ薬局に管理栄養士がいるのか?
近年、調剤薬局やドラッグストアで管理栄養士の需要が増加しています。薬局で管理栄養士が求められる理由を一言で言うと、地域住民の健康サポートを強化するためです。背景を詳しく説明していきます。
「健康サポート薬局制度」の導入
高齢化が進む現代において、薬局に求められる役割が変化しつつあります。処方箋による調剤に留まらず、地域住民にとって身近な「健康相談の拠点」を担うことが期待されています。象徴的なのは2016年4月に施行された「健康サポート薬局制度」です。
健康サポート薬局制度は、地域住民の健康維持・増進を積極的に支援する薬局を認定するものです。従来の調剤機能に加えて、健康に関する相談対応を行います。
この「健康に関する相談対応」には、市販薬や健康食品に関する相談はもちろん、食事や栄養、運動、介護など、幅広い健康相談に対応できる体制が求められます。この点で、管理栄養士は専門的な知識とスキルを活かし、重要な役割を果たしています。
ちなみに厚生労働省の資料によると、健康サポート薬局は全国に3,232店舗あります。(2024年9月30日時点)
未病・予防医療への関心の高まりとセルフメディケーション
高齢化が進む日本では、生活習慣病の予防や重症化防止が大きな課題です。これまでの「病気になってから治療する」という考え方から、病気になる前の「未病」段階でのケアや「予防」が注目されています。
ここで重要になるのが、「セルフメディケーション」の考え方です。軽い身体の不調は自分で手当てすることを指す言葉です。単に市販薬を選ぶだけでなく、日頃から食生活や運動などの生活習慣を意識して健康維持・増進に努めることも含まれます。
管理栄養士は、このセルフメディケーションを強力に推進する専門家です。薬局に管理栄養士が配置されることで、食生活からのアプローチによる未病対策と、薬と食事の両面からのサポートが実現できるという訳です。
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調剤薬局・ドラッグストアで働く管理栄養士の具体的な仕事内容について、詳しく紹介していきます。
処方箋の受付
薬局に来局された患者さんから処方箋をお預かりし、内容を確認します。患者さんの氏名や生年月日、アレルギー歴、他の服用薬、副作用歴などを丁寧にヒアリングし、薬剤師に情報共有を行います。この段階で、患者さんの栄養状態に関する情報(例:糖尿病、腎臓病、嚥下機能など)も把握し、後の栄養相談に活かす準備をします。
ピッキング(調剤補助)
処方箋の内容に基づいて、薬剤師の指示のもと、薬棚から正しい医薬品を取り揃えます。薬の種類や量、剤形(錠剤、粉薬、外用薬など)を正確に確認し、間違いがないように慎重に作業を進めます。薬局によっては、管理栄養士がこの業務を担うこともあり、薬の名前や効果に詳しくなることで、後の栄養指導にも役立ちます。
店舗業務
薬局の日常業務全般にも携わります。具体的には、レジでの会計業務、商品の品出し、在庫管理、発注業務などが挙げられます。また、OTC医薬品(一般用医薬品)やサプリメント、健康食品、日用品などの陳列・管理も行います。患者さんやお客様の質問に対応したり、商品の場所を案内したりと、店舗運営のスムーズな進行に貢献します。
商品説明(健康食品やサプリなど)
店頭に並ぶ健康食品やサプリメント、特定保健用食品(トクホ)などについて、お客様のニーズや健康状態に合わせて適切な商品を提案し、商品説明を行います。栄養の専門家として、商品の成分や効果、飲み方、注意点などを分かりやすく説明し、疑問や不安を解消します。時には、薬との相互作用や、食事との兼ね合いについてもアドバイスすることもあります。
栄養相談、栄養指導
薬局管理栄養士の専門性を最も発揮できる業務です。処方箋の内容やお客様の健康状態、食生活の悩みなどを踏まえ、個別に栄養相談や栄養指導を行います。薬局で直接行われるほか、在宅訪問やZoom等を使用したオンラインでも実施されます。
具体的には糖尿病や高血圧などの生活習慣病、腎臓病やがんなどの疾患別の食事、低栄養予防、アレルギー対応、スポーツ栄養、ダイエットなど、幅広いテーマに対応します。患者さん一人ひとりに寄り添い、実現可能な具体的な食事プランや調理法、食品選びのポイントなどを提案し、健康的な食習慣をサポートします。
イベントや広報活動
地域の健康増進に貢献するため、薬局内外で様々なイベントや広報活動を企画・実施します。例えば、特定健診の受診勧奨、健康測定会(体組成計、血圧測定など)、骨密度測定会、減塩レシピ教室、糖尿病予防講座、食育イベントなどを開催することがあります。地域の住民の方々との交流を通じて、健康意識の向上を図り、薬局を「健康の拠点」として活用してもらうための情報発信を行います。
1日のスケジュール例
薬局管理栄養士の年収はどれくらい?
薬局管理栄養士の平均年収は、300万円〜350万円程度と推測されます。月給では22万円~25万円程度となります。
平均年収 | 平均月給 |
---|---|
300万円~350万円 | 22万円~25万円 |
注意点として、薬局管理栄養士を対象とした、給料についての公的なデータは残念ながら存在しません。コメディカルドットコムに掲載中の管理栄養士求人(2025年5月時点:2,885件)や他社求人サイトを基に、筆者が分析を行っています。参考程度の数字と考えてください。
コメディカルドットコムで掲載中の薬局管理栄養士求人のモデル年収を集計すると、260万円〜400万円の幅に収まります。傾向として、薬局管理栄養士の給与は、病院や老健など他の一般的な職場の管理栄養士よりもやや低いです。薬局で働く事務スタッフと給与水準が近いのが理由だと考えられます。
薬局管理栄養士のやりがいと魅力
薬局で働くからこそのやりがいと魅力について紹介していきます。
薬の知識が身につく
薬局管理栄養士として働く大きな魅力の一つは、薬に関する幅広い知識が自然と身につくことです。日々の業務の中で、患者さんへの服薬指導や薬の説明を薬剤師と連携して行う機会が多くあります。これにより、薬の種類や効能、副作用だけでなく、飲み合わせや食事との相互作用など、栄養指導を行う上で不可欠な薬の知識を深めることができます。
地域住民の健康を包括的にサポートできる
薬局は地域住民にとって最も身近な医療機関の一つです。薬局管理栄養士は、病気の方だけでなく、健康な方や未病の方に対しても栄養指導を通じて健康増進に貢献できます。処方箋を持ってきた患者さんに対して、服薬指導と合わせて食事のアドバイスをしたり、健康相談に来た地域の方に生活習慣病予防のヒントを提供したりと、幅広い層の健康をサポートできるのは大きなやりがいです。
また、薬局によっては、健康イベントの開催や地域活動への参加など、地域に密着した取り組みを行っている場合もあります。そうした活動を通じて、地域住民の方々と顔の見える関係を築き、よりきめ細やかなサポートを提供できることは、薬局管理栄養士ならではの魅力と言えるでしょう。
スカウトサービス登録はこちら薬局管理栄養士の大変さ、辛いところ
薬局で働くからこその大変さ、辛いところにも目を向けます。良い面も悪い面も知ったうえで、キャリアを考える参考にして欲しいです。
専門外の質問に対応する難しさ
薬局には、栄養に関する相談だけでなく、薬や健康、商品に関する様々な質問が寄せられます。薬局管理栄養士は、栄養の専門家ではありますが、時として専門外の薬の作用や副作用、他の病気に関する一般的な質問などにも対応を求められることがあります。
もちろん、薬剤師と連携して対応しますが、質問の意図を正確に理解し、適切な情報を提供するためには、自身の知識の幅を広げ続ける努力が必要です。すぐに答えられない場合でも、患者さんを不安にさせないよう、正確な情報を伝えるための工夫や、薬剤師へのスムーズな連携が求められます。
店舗によっては調剤補助業務ばかりに
薬局管理栄養士として採用されたにもかかわらず、配属される店舗の状況によっては、調剤補助業務が日々の業務の大半を占めてしまうことがあります。これは、特に調剤事務の人数が不足している店舗や、産休や育休で欠員が出た場合などに起こりやすい状況です。
「管理栄養士として入社したのに、ほとんど事務作業ばかりしている」と感じ、自身の専門性を活かせないことに対するジレンマや不満を抱えることにもつながりかねません。
薬局管理栄養士に向いている人
薬局管理栄養士に向いているのはこんな人です。
薬と食品の関係に興味がある人
薬局管理栄養士は、薬の効果を妨げない食品の組み合わせや、病態に合わせた栄養指導など、薬と栄養の両面からサポートを行います。常に新しい知識を学び、アップデートしていく意欲が必要です。
地域貢献や健康サポートに興味がある人
薬局は、地域に根ざした身近な健康の相談窓口です。薬局管理栄養士は、単に薬を渡すだけでなく、訪れる地域の皆さんの日々の食生活や健康習慣について耳を傾け、病気の予防や生活習慣病の改善に繋がる具体的なアドバイスを提供します。
様々な仕事に挑戦したい人
栄養相談や健康指導だけでなく、店舗のレジ打ち、品出し、発注業務、イベント企画など、管理栄養士の枠にとらわれずに多様な業務に携わる機会があります。
薬局管理栄養士になるには?
薬局管理栄養士として働くには、まず管理栄養士の国家資格が必須となります。大学や専門学校で管理栄養士養成課程を修了し、国家試験に合格することで資格を取得できます。
新卒採用を行う薬局も多い
管理栄養士の資格を取得したら、就職活動を行うことになります。最近では、地域の健康ステーションとしての役割を強化する薬局が増えているため、新卒の管理栄養士を採用する薬局も多くなっています。
新卒採用では、これまでの実習経験や管理栄養士としての学び、そして何よりも薬局管理栄養士になりたいという熱意が重要視されます。薬局によっては、薬剤師と同様に調剤補助業務やレセプト業務など、栄養指導以外の業務にも携わる場合があります。そのため、面接では、どのような業務にも積極的に取り組む姿勢を示すことが大切です。
また、見学を通じて職場の雰囲気や業務内容を事前に把握しておくことも有効です。薬局によって栄養士の役割や業務範囲が異なるため、自分のキャリアプランに合った薬局を選ぶことが成功への鍵となります。
中途採用は経験不問の傾向
薬局管理栄養士の中途採用向けの求人は、ほとんどが経験不問です。長く求人業界にいますが、筆者は「薬局管理栄養士の経験者募集」を見たことがありません。実際に働く上で必要なスキルとして、基本的なPCスキルと栄養指導は最低限求められますが、多くの方はクリアしているでしょう。
なので、薬局管理栄養士として働いてみたいという思いがある方は、気になる求人があれば気負わずに応募してみてください。
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薬局管理栄養士が描けるキャリアプランを2つ紹介します。
薬局内での役割拡大・管理職へ
経験を積むことで、薬局内でチームリーダーや管理職として、他の管理栄養士の育成や指導、業務改善、栄養相談室の運営などに携わる道も開けます。薬局全体の栄養部門を統括し、薬剤師との連携をより強固にするための仕組みづくりや、地域医療連携における栄養士の役割拡大に貢献することも可能です。マネジメント経験を積むことで、リーダーシップや問題解決能力を向上させ、より広い視野で薬局経営や地域医療に貢献できるようになります。
独立・起業
薬局での経験を活かし、独立してフリーランスの管理栄養士として活動する道もあります。例えば、地域の薬局と業務提携を結び、栄養相談業務を請け負ったり、特定の疾患を持つ患者さん向けの栄養カウンセリングサービスを提供したりすることが考えられます。また、ヘルスケア系の企業と連携して、健康食品の開発アドバイスやレシピ開発、執筆活動など、多岐にわたる事業を展開することも可能です。薬局で培った実践的な知識と経験は、独立後の活動において大きな強みとなるでしょう。
薬局管理栄養士におすすめの資格
薬局管理栄養士がスキルアップ、キャリアアップしていく上でおすすめの資格を紹介します。
登録販売者は重宝される
薬局管理栄養士が登録販売者の資格を取得することは、非常に大きな強みとなります。登録販売者は、一般用医薬品(OTC医薬品)の販売ができる国家資格であり、薬局にとっては欠かせない存在です。管理栄養士がこの資格を持つことで、栄養指導と合わせてOTC医薬品の相談にも対応できるようになり、患者さんの健康サポートをより包括的に行えます。
例えば、風邪薬と食事の組み合わせや、便秘薬と食物繊維の摂取など、薬と栄養の両面からアドバイスが可能になります。薬局側も、一人で二役をこなせる人材は重宝するため、就職やキャリアアップにおいて有利に働くでしょう。
在宅訪問管理栄養士
高齢化が進む現代において、在宅医療のニーズはますます高まっています。在宅訪問管理栄養士は、自宅で療養している患者さんを訪問し、食と栄養の面から療養生活を専門的にサポートする管理栄養士です。在宅医療に力を入れている薬局の場合は大変重宝されます。
認定自体も価値がありますが、認定に向けて勉強する中で、多くの学びと知識を得られます。薬局管理栄養士としての専門性を高める上で非常に有用な資格です。
フードスペシャリスト
フードスペシャリストは、食に関する幅広い知識を持つことを証明する民間資格です。食品の特性、調理法、加工、流通、衛生管理など、食に関する専門知識を体系的に学ぶことができます。薬局管理栄養士がこの資格を持つことで、栄養指導において、より実践的で魅力的なレシピ提案や、具体的な食材の選び方、調理の工夫などをアドバイスできるようになります。例えば、栄養指導だけでなく、健康食品の提案や、薬局で販売している食品に関する情報提供など、食に関するスペシャリストとして患者さんや地域住民からの信頼を得やすくなるでしょう。
糖尿病療養指導士
糖尿病は、食事と密接に関わる疾患であり、薬局には多くの糖尿病患者さんが来局します。糖尿病療養指導士は、糖尿病患者さんやその家族に対して、療養生活を支援するための専門的な知識と技術を持つことを認定する資格です。薬局管理栄養士がこの資格を取得することで、血糖コントロールのための具体的な食事指導、自己管理の方法、合併症予防のアドバイスなど、より専門的で質の高い糖尿病ケアを提供できるようになります。薬剤師との連携もスムーズに行えるため、糖尿病患者さんへの多角的なサポートが可能になり、薬局における糖尿病サポートの中核を担う存在となれるでしょう。
薬剤師とのダブルライセンス
非常に難易度は高いですが、管理栄養士と薬剤師のダブルライセンスは、薬局管理栄養士として究極のキャリアパスと言えるでしょう。薬と栄養の両方の専門知識を持つことで、薬の作用機序を理解した上での栄養指導や、栄養状態を考慮した服薬指導など、他に類を見ない包括的な医療サービスを提供できます。患者さんからの信頼も厚く、薬局における医療の質を飛躍的に向上させることができます。将来的には、薬局の経営や地域医療におけるリーダーとして、多大な貢献が期待される存在となるでしょう。
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薬局管理栄養士は、健康サポート薬局制度やセルフメディケーションへの関心の高まりを背景に、地域住民の健康を支える専門職として需要が増えています。その役割は、栄養指導や健康相談といった専門業務にとどまらず、調剤補助や店舗業務まで多岐にわたります。
薬と食事の両面から地域貢献できる点に大きなやりがいがある一方、給与水準や職場によっては管理栄養士としての専門性を活かしきれないといった課題も存在します。
薬局管理栄養士は、登録販売者などの関連資格取得を通じてスキルアップを図ることで、その価値を一層高め、地域医療に不可欠な存在としてさらに活躍の場を広げることが可能です。
薬局管理栄養士の求人は、新卒採用を積極的に行う薬局が多く、中途採用においても「経験不問」がほとんどです。薬局で働いてみたいという熱意さえあれば、誰にでも挑戦のチャンスがあります。
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